事例紹介/規文堂webマガジン「Scale(スケール)」vol.03「京都国際マンガミュージアム」

2006年にオープンし、京都の新名所として人気を集める「京都国際マンガミュージアム」。
建物は昭和初期の小学校校舎を改修して利用したものです。その第1期工事から現場に入り、書架などを既存の建物に合わせてつくらせていただきました。ミュージアムの企画・立案の段階から携わってこられた上田様にお話を伺いました。

Interview:事務局長 上田 修三様

京都国際マンガミュージアム

Voice:古き良き学び舎をそのままに、マンガの総合文化施設に

 今や日本の一大カルチャーとして世界中にファンが広がる「マンガ」。その研究と教育に先駆けて取り組んできた京都精華大学が京都市との共同事業で2003年、日本で初めてとなるマンガの総合文化施設の構想をスタートさせました。

 場所として選んだのが、京都の中心部、烏丸御池のオフィス街に残る、昭和4年建造の元龍池小学校の校舎です。建物のあちこちに懐かしい温もりがあり、都心にしては広い校庭もあり、『ガーデン・ライブラリー』という構想イメージが一気に膨らみました。地域に愛されてきた小学校だからこそ大切に受け継ぎたい、地域の人々はもちろん、多くの人々に愛され親しまれる空間にしたいという思いがありました。

施設内の様子

 改修工事にあたっては、外観も内部もできるだけ建造当時の雰囲気をそのまま残す、ということにポイントを置きました。木の床や扉、レトロな窓などは少々軋んだりしても、使える箇所は使い、古い建物ならではの重厚感や味わいを損なわないようにしました。

 主役となるマンガを並べる書架については、すべて規文堂の製作です。利便性や機能性を備えたうえで、周りに調和するブラウンの木の風合いに、というオーダーでした。古い壁や柱をそのままに、隙間なく書架を組み込むのはそう簡単ではなかったと思いますが、丁寧に製作したもらったおかげで、以前からあった本棚のようにとけ込み、落ち着いたミュージアムを演出することができました。

丁寧に増設を重ねて200mにおよぶ「マンガの壁」

 2006年秋に開館し、マンガの図書館・博物館としての機能だけでなく、マンガ文化の調査・研究、人材育成・生涯学習の場として、さらに新産業創出の場としての役割を担う京都国際マンガミュージアム。現在、明治期の雑誌から海外ものまで合わせて約30万点のマンガ資料を所蔵し、5万冊の開架図書を「マンガの壁」と呼ばれる書架に並べています。貸し出しはありませんが、それらを何冊でも手にし、館内のどこででも自由に読んでもらえるのが、このミュージアムの特長です。天気のよい日に校庭の芝生で寝そべって読むスタイルもすっかり定着しました。

 「マンガの壁」は多彩なジャンルを作者名50音順で並べていますが、収納場所が不足するたびに規文堂に増設をお願いし、総延長200mになりました。2階の「メインギャラリー」も高い天井まで伸びる巨大な書架が空間を囲むように並びますが、当初はその半分ほどの高さしかなく、必要に応じて上に伸長したものです。マンガにまつわる歴史や雑学などさまざまなパネル展示とともに、エネルギーあふれるマンガの世界に浸ることができます。

施設内の様子

名の通り、国際色豊かな広く開かれたミュージアム

施設内の様子

 昔、職員室だった場所は子どもたちがマンガや絵本を楽しめる「こども図書館」になりました。元の龍池小学校の名にちなみ、天から降り注ぐ雨と緑の池をイメージした空間で、床を柔らかく安全にし、柱まわりに円形の書架を配するなど、明るく楽しい雰囲気をかもし出しています。

施設内の様子

 そのほか、特別展や企画展を開催するギャラリー、研究閲覧室、紙芝居小屋、ミュージアムショップ、ミュージアムカフェなど、目的に合わせてさまざまに利用できるスペースがあり、広く一般に開かれたミュージアムとなっています。

 現在、来館者数は年間27万人で、昨年は総来館者数200万人を超えました。その約15%が、フランス、アメリカ、オーストラリアといった海外からの来館者です。日本のサブカルチャーだったマンガがメインストリームとなり、世界中で愛される文化となった確かな証だとうれしく思っています。まだ色々「実験中」ですが、10年後、20年後も懐かしい温もりや感動を求めて国内外から多くの人々が訪れる、魅力あるミュージアムにしてゆきたいと思っています。

from Kibundo:新旧違和感のない落ちついた空間づくりに

株式会社規文堂 横山 哲志

 京都精華大学様とは本校の図書館のお仕事もさせていただき、上田様とも20年近いお付き合いをさせていただいています。ミュージアムの基本構想は以前からあったようですが、京都市への提案後は話が迅速に進み、開館まで2ヶ月という短い工期で製作・設置させていただきました。

 木の良さを感じさせる落ち着いた空間に、というテーマのもと、書架の色や材質選びにはこだわりました。コスト低減とのバランスも考慮し、最善のものを提案させていただきました。

 古い建物なので傾斜が出ていたり、壁に凹凸が多い様式であったりしたため、一箇所一箇所丁寧な寸法出しと緻密な技術が求められましたが、新旧の差も気づかれないほど違和感なく仕上がったようです。もちろん高い天井まで届く書架をはじめ、すべてに耐震性や安全性の配慮をしています。

 博物館としての役割もありますので、「見せる収納」としての工夫もあちこちに施しています。掲示板やモニターが設置可能な可動式の書棚もつくらせていただきました。エントランスのロッカーや空調の目隠しなども、ブラウンの色合いで仕上げ、全体に統一感のあるミュージアムになったと好評をいただいています。

 「まだ色々、実験中」とのこと。こちらからも積極的に提案させていただきながら、今後もよりよい空間づくりのお手伝いをさせていただきたいと思っています。

施設内の様子