ラーニングコモンズは、欧米式の学習支援施設で、学生の自主的な学びや創意工夫を促すことを目的としています。

日本においては図書館の中、あるいは隣接する形で設けられている場合が多く、全国問わず大学の中に多数見られます。

近年では、「アクティブ・ラーニング」という名で、小学校・中学校・高等学校にもラーニングコモンズのような教育支援システムを導入しようという動きが始まっています。

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1401806.htm

(文科省のページ)

ラーニングコモンズを学校の中に設置したり、図書館を改装するという動きが加速するはずです。いずれにせよ、学校図書館は今後ますます重要な役割を果たすことになるでしょう。

以下では、規文堂で手掛けたラーニングコモンズの事例を紹介します。

 

■インタビュー 兵庫教育大学

学生が自由に出入りし、方法も形式も自在にデザインしながら学習活動を行う「学びの共有空間」を作る。そんな発想で、図書館1階の288㎡のスペースを改修し、「ライブラリーラーニングコモンズPAO」を設けました。

「PAO」のコンセプトは、「Peer Learning(学習者同士の学び合い)」「Active Learning(能動的学習)」「Open Learning(開放的学習)」。この3つを実現するにはどのような空間をデザインすればいいか、図書館で議論し、また他大学の図書館やラーニングコモンズを見学し、検討を重ねました。

特に意識したのは、ずっとそこにいたくなる居心地の良い空間をつくること。「図書館というより、まるでカフェのような場所にしたい」と考え、「木」を取り入れることを決めました。

規文堂に手がけてもらった木製の書架やファニチャーの中でもひときわ大きな存在感を放っているのが、PAOの一角を占めるリーディングテーブルです。同じ場所に集いながらも、適度なプライバシーを保って読書や勉強ができるスペースにしたいとの思いから、長さ4mに及ぶ大テーブルを無垢材で設計・製作してもらいました。天然の木を用いたおかげで、温かみのあるくつろいだ空間を実現することができました。

また壁一面に木製の書架を設置。通常あまり書架を置かないラーニングコモンズに文庫や新書、話題の本を配架し、学生が気の向くままに図書や雑誌を手に取り、ソファや椅子に座って本を読めるようにしたことで、自然と腰を落ち着けられる雰囲気が生まれました。

学生が動き回る場所だけに、気がかりだったのは、安全性です。耐震性の高い施工の他、書棚に棚板の落下防止キャップを設置するなど、規文堂の防災対策のおかげで、安心して利用できる空間になりました。

もう一つ、雑誌や新聞が気楽に読める、明るく快適な空間がほしいとの思いから設置したのが、オープンテラスに面したブラウジングエリアです。ここには動線に沿って曲線を描く開架書棚を設置しました。設置場所にピタリと合う正確な作り、ていねいな仕上がり、何パターンもの色の見本を用意するなど、規文堂のきめの細かい対応には満足しています。

PAOを設置したことで、図書館を訪れる学生の数は大幅に増えました。とりわけPAOでの滞在時間が以前とは比べ物にならないほど増えたことが、嬉しいですね。自習したり、調べものをするだけでなく、ふらりと立ち寄って本や雑誌を開くなど、空いた時間を過ごす場になっているようです。

今後は、読書空間としての機能をいっそう充実させたいと考えています。例えば、書架の一画を学生にゆだね、好きなテーマ、好きな分類で本を配架してもらうなど、魅力ある書架作りにも取り組んでいきたいと、アイデアを膨らませています。

学びの場として、また本と出会う場として、これからもっとこの空間を進化させていきたい。楽しみが広がります。