規文堂 企画部
新型コロナウィルス(COVID-19)の世界的大流行により、各国の政府は、国民に対し行動を制限し、不要な接触を控えるよう呼びかけています。これを受け、図書館や博物館といった人が集まる施設は休館を余儀なくされました。
この記事では、「休館中の図書館や博物館におけるWebサービスの展開」に焦点を当て、紹介したいと思います。
・資料をオンラインで閲覧
紙媒体で図書館や博物館に収められている資料をデータ化し、オンラインで閲覧できるようにする動きが見られます。
「インターネットアーカイブ」は、無料で140万冊のデジタル書籍を読める「National Emergency Library」(国立緊急図書館)をオープンさせました。ユーザーは一度に最大10冊までを、自由に借りて読むことができます。「ハリー・ポッター」シリーズのような現在出版中の著作権のある本も期間限定で公開されています。
https://archive.org/details/nationalemergencylibrary
神奈川県⽴⾦沢⽂庫では、500 点の古文書の詳細情報を、高精細画像とともにインターネット公開しました。古文書のくずし字が読める翻刻データや検索機能を備え、研究者から一般人まで誰でも古文書を閲覧できます。今後、全点にあたる約4,000 点の公開に向けて、随時更新されます。
https://www.kanazawabunko.pref.kanagawa.jp/bunko/viewer/logon.jsp
博物館をまるごとデジタル化した「バーチャル博物館」も登場しています。Google Arts & Cultureでは、展示物だけでなく展示室の内部を360度撮影したミュージアムビューを公開しています。マウリッツハイス美術館(オランダ)やエルミタージュ国立美術館(ロシア)など世界中の美術館や博物館が公開されており、気軽に自宅から世界中に出掛けていくことができます。
https://artsandculture.google.com/
※4/28追加
家での博物館体験のリアリティを追求したのが、国立科学博物館の「かはくVR」です。VR専用眼鏡をかければ、まるで博物館の中に入りこんだように展示を鑑賞することができます。パソコンやスマートフォンのみでも3Dビューを楽しめます。
※5/12追記
アメリカのハーバード大学図書館、ワイドナー図書館の360度バーチャルツアーが公開されました。閉館となっている同館の中を、随所にある歴史的解説を読みながら自由に見て回ることができます。スマートフォンを使用している場合、VR表示に変更することも可能です。
・動画を使ったコンテンツ
資料の魅力を伝えるための一工夫として、動画配信があります。
東京子ども図書館では、普段は図書館の児童室で読み聞かせを行っていましたが、中止せざるを得なくなりました。そこで、自宅で過ごす子どもたちのために読み聞かせ動画のYouTube配信を始めました。「生の声で、本や物語のおもしろさを伝えること」を大切にしているといい、音声付き資料とは違う、人に読んでもらっている雰囲気を感じる動画になっています。
東京国立博物館でもYouTubeで「オンラインギャラリーツアー」と題した動画を配信しています。一般公開が叶わなかった企画展示を、研究員が解説しながら歩いてまわります。企画展示は期間限定のものなので、この機会でないと見ることができません。実際にギャラリートークを聞きながら見てまわっているような体験ができます。
https://www.youtube.com/channel/UCi4kijTbqPOh1LPN2f0eQYg
※4/28追加
「ニコニコ美術館」は、 注目の展覧会を解説付きで生中継する動画です。「どこよりも深く自由に、美術と展覧会の楽しみ方が分かる特別番組をお送りします」と銘打ち、動画は90分~120分と長めなのでじっくり楽しめます。動画は生中継で配信され、出演者の徹底解説は時には知られざる裏話やこぼれ話も飛び出します。本物の美術作品を見ながら自分のコメントも投稿できます。
https://ch.nicovideo.jp/niconicomuseum
・チャットで司書とつながる
レファレンスは図書館ならではのサービスです。対話が重要なので、図書館のカウンターに行くのが最も一般的な方法でした。直接話す以外に、電話やファックス、メール等でレファレンスを頼むこともできましたが、頼んでから欲しい資料を得るまでに時差が生まれていました。
大英図書館(イギリス)では、図書館員とチャットで相談ができるようになりました。チャットなので、面と向かった会話のようにオンタイムで相談することが可能です。また、図書館員もリモートワークで対応できるので、外出する人数をより減らせます。
ニューヨーク公共図書館(アメリカ)では、子どもの自宅学習のサポートをするオンラインサービスができました。一対一の個別指導が無料で受けられ、宿題などの手助けをしてくれます。対象は小学生から高校生で、言語は英語とスペイン語の2種類が選べます。受付時間は午後2時から11時まで、と遅い時間にも対応しているようです。
・ウェブでの積極的な発信
ベルリン美術館(ドイツ)では美術館スタッフのブログが活発に更新されています。コレクションの紹介やキュレーターへのインタビュー、美術品の修復についてなどテーマは多岐にわたっています。FacebookやInstagramといったSNSの活用も行っており、公式ハッシュタグ#SMBforHomeと#ClosedButOpenで発信しています。
https://www.smb.museum/en/home.html
※4/28追加
休館中の岐阜県瑞浪市民図書館では、職員が小説や絵本などさまざまなジャンルから自由に選んだ本を毎日一冊ずつ、同館公式TwitterとInstagramで紹介しています。ハッシュタグには「#おうちで図書館」や「#こういうときこそ本を読もう」がつけられています。投稿する写真は、同館近くの広場など外で撮影。桜など草花を背景にすることで、明るい気持ちになってもらえるように工夫しています。
・歴史的資料をもっと身近に
ニューヨーク医学アカデミーは、博物館や図書館が所蔵するユニークな塗り絵の冊子を、無料でダウンロード可能にしました。各施設が所蔵する歴史資料の挿絵や図鑑のスケッチなどを抜き出して冊子にまとめてあり、塗り絵を楽しみながらそれらの資料に親しむことができます。この活動には、ニューヨーク植物園やスミソニアン博物館など、100以上の団体が参加しています。
※Twitter(ツイッター)上で#ColorOurCollectionsのハッシュタグを検索
https://twitter.com/search?q=%23ColorOurCollections&src=typed_query
早速、規文堂でも塗り絵を作ってみました。
「図書館ぬりえ」です。我ながら、なかなかマニアック。
下にpdfリンクを貼っています。3種類あるので、お好きに使ってください。
さらに、ブックカバーで使えるようにしてみました。
商用利用でなければ、お好きに使ってください。
※4/28追加
「おうちミュージアム」は、「学校がはじまるまで、おうちでたのしもう!」を合言葉に、楽しみながら学べるコンテンツを提供するミュージアムが集まった企画です。ハッシュタグ「#おうちミュージアム」を共通して使うことで、多くの人がミュージアム特製のコンテンツにアクセス・シェアしやすくなっています。現在、全国各地84のミュージアムが参加しています。
・休校中の学校図書館の取り組み
※5/12追記
文部科学省は、子どもの読書活動を教育の一環として促進しています。しかし、学校が臨時休校になり、学校図書館の活動は滞っています。そこで、「三つの密」を避けながら行っている取り組みを紹介しています。
① 居住地域ごとに時間を区切っての貸出し
②分散登校日を活用した貸出し
③ 電話やメールで貸出リクエスト → 郵送等による配達貸出
④学校司書によるおすすめ本の紹介
https://www.mext.go.jp/content/20200423-mxt_kouhou01-000004520_6.pdf
いかがでしょうか。
現在のように行動が制限されている中で、図書館や博物館の持つ資料を最大限活用できるように、様々なサービスが考えられています。自宅で手軽に楽しめるWebサービスは、これからも展開が見込まれます。
過酷な状況の今こそ、公共施設のあり方が改めて模索される転換点ではないかと考えています。
規文堂 企画部
※項目は随時追加していきます。他にも共有したい取り組みやウェブサイトがある方は、お問い合わせよりご連絡いただければ幸いです。
https://www.kibundo.co.jp/contact/index.html
※文章の無断転載はご遠慮ください。
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